名古屋地方裁判所 昭和25年(ヨ)76号 決定
申請人 高松康之 外十六名
被申請人 株式会社大林組
一、保証 無保証
二、主 文
被申請人は申請人等にたいし、昭和二十五年二月分及び同三月分の賃金として別紙賃金表「合計支給額」欄記載の金額より法定の所得税額を控除した金額をかりに支払わねばならない。
被申請人がこの決定告知の日より五日以内に右支払をしないときは強制執行をすることができる。
三、理 由
当裁判所の認定したところを要約すれば次のとおりである。
申請人等は被申請会社の従業員であつたが昭和二十四年十月十一日附で解雇された、そこで右解雇の当否につき一応判断してみるに、被申請会社の就業規則第五十三条には、
「従業員が次の各号の一に該当するときは、三十日前に予告するか、又は三十日分の平均賃金を支給して解職又は傭解する。但し天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となつた場合又は従業員の責に帰すべき事由に基いて解職又は解傭する場合においては、この限りでない。一、精神若しくは身体に故障があるか、又は虚弱老衰若しくは疾病のため就業ができないと認めるとき。二、前号に準ずるやむを得ない事由のあるとき。(以下略す)」。
と規定しており、その趣旨は必ずしも明瞭ではないが、この規定が労働基準法第二十条の法意を踏襲しながら特に第一、第二号の解雇事由を掲げていること(基準法の修正は労働者の有利にのみなされうる)に徴すれば、右規定但書所定の場合のほかは解雇事由を第一、二号に該当する場合(即ち従業員側に就業に堪え得ない事由が生じた場合)に限定する趣旨であると解釈する方が客觀的に妥当であろう。
もつとも被申請人は「労働協約第九条によれば従業員の解雇については組合と協議することになつていないから、ことさら就業規則で解雇事由を制限するのは無意味である。規則第五十三条は組合が同意を拒み得ない顕著な事由を例示したにすぎない。」と主張するけれども、右両個の規定が併存することはあながち無意味といえないし、又労働協約が失効した場合においては就業規則自体として客觀的な解釈が加えられるべきは勿論であろう。
しかして、被申請会社の申請人等に対する本件解雇は、申請人等提出の各疏明資料によれば就業規則第五十三条所定のいずれの場合にも該当しないと思われるのであるから、右は同条に違反し無効であるといわねばならない。従つて申請人等の被申請会社における従業員たる地位は未だ失われておらず、且つ申請人等が会社に対して労務提供をしたことはその疏明によつて認め得るのであるから、被申請会社は申請人等にたいし他の従業員と同一基準による別紙賃金表記載の賃金を支払う義務を負うこと当然であり、会社がこれを履行しないため申請人等の生活が急迫の状態にあることは推察に難くない次第である。
このような譯であるから、本件申請は結局正当であつてこれを認容すべく、よつて主文のように決定する次第である。
(裁判官 山口正夫 奥村義雄 杉山克彦)
別紙賃金表<省略>